ご挨拶

平成19 年4月より東京女子医科大学東医療センター脳神経外科の診療部長を務めております。本教室は、昭和55年(1980年)6月1日に開設、神保実教授によって主宰されました。これまで荒川区を中心とする区東北部の地域医療に貢献してきたことは言うまでもありません。現在では日本全国に行きわたったガンマナイフですが、ここ東医療センターに来られた患者さんを神保実先生、山本昌昭先生がカロリンスカに連れて行かれ治療されたのが、日本での初期の経験と言えます(この経緯は「ガンマナイフ事始」に詳しく書かれています)。平成14年には、2代目教授河村弘庸先生のご尽力で東部脳神経外科フォーラムが立ちあげられ、この地区の脳神経外科医が集う貴重な会となっております。
当院は、区東北部(荒川・足立・葛飾区)129万人に唯一の3次救命救急センターを有しているため、重症の脳卒中・頭部外傷を扱う病院として1年365日1日24時間常に救急に対応できる体制をとっております。また、3次救急のみでなく、1次2次救急も同様の体制で臨んでおり、地域の住民に信頼されています。救急疾患はもちろんのこと、すべての脳神経外科疾患に、豊富な経験を持つスタッフが対応しています。良性脳腫瘍(髄膜腫、下垂体腫瘍、 前庭神経シュワン細胞腫など)では機能温存手術を心がけております。機能性疾患(顔面けいれん、三叉神経痛) の外科治療、脳動脈瘤の開頭手術・血管内治療、脊髄脊椎疾患も得意分野としております。常に「患者さんの立場に立って(自分の家族と思って)」診療することを徹底しています。
当院は東京女子医科大学付属の教育病院です。学生・研修医の育成が使命です。協力していただいている関連施設とともに、当科を選んでくれた研修医に最良の研修を与えるべくプログラムを工夫しております。また、脳卒中学会訓練認定施設としても認定されております。学生・初期研修医の教育にも、教室員一丸となって力を注いでおります。人材の育成は簡単ではありません。専門医を取得だけを目的とはせず、各個人に合わせたプログラムを組んで、希望を取り入れながら、社会に貢献できる脳神経外科医を10年くらいかけて育てることを目標としております。
また、当科はWFNS(世界脳神経外科機構)から World Training Center の認定を受け、途上国の脳神経外科医の医師の育成にも力を注ぎ、その国を担う脳神経外科リーダーになってもらうべく、医師を受け入れております。
International Clinical fellow
一方、研究は地域に留まらず世界に発信せねばなりません。脳動脈瘤、くも膜下出血の研究、なかでも脳血管攣縮治療、脳動脈瘤原因遺伝子研究では、世界をリードしてきました。最近では、教室員の数も増えたため、脳出血、脳卒中、画像診断、頭部外傷、髄膜腫、三叉神経痛も研究テーマに加わっています。
当院は2021年現在地から3km離れたところへの移転が決まっております。最新の設備を備えた機能的な病院に変貌します。これから、ますます発展が期待されます。
今後とも、当科の医師は、脳神経外科疾患の患者さんがより幸せに暮らせるよう診療し、よき医療人を育み、研究によって社会に貢献できるよう邁進していきます。