正常圧水頭症
外科手術で治る唯一の認知症
①認知症状がでてきた、②歩行が遅く歩きにくくなった、③おしっこが間に合わなくなってきた、という3つの症状がある患者さんの中には「正常圧水頭症」という脳神経外科で手術をすれば症状が治る病気が含まれています。
原因
頭蓋骨の中に脳は存在するわけですが、脳と頭蓋骨の間や脳の中には脳脊髄液という透明な水がぐるぐる循環しています。この髄液は脈絡叢(みゃくらくそう)という脳の部分から産生されて、くも膜顆粒という脳の部分に吸収されていく仕組みになっています。加齢、以前あった頭への軽度の衝撃などさまざまな要因にて、脳内に髄液が貯留した状態になることを水頭症といいます。髄液の通り道が腫瘍や血液等でふさがれていないにも拘わらず、頭の中の圧が高くないにも拘わらず髄液が貯留していると、上記のような症状が出現します。
診断
水頭症を疑ったらまず画像検査を行います。CTスキャンが簡便に短時間で出来ますが、MRIまで行うことが理想的です。この検査で脳脊髄液の溜まっている脳室という場所の拡大や脳のこめかみあたりにある両側のしわの幅が広くなっているにもかかわらず脳のてっぺんの方にあるしわが幅狭くなっていることが正常圧水頭症の重要な所見です。両方のしわの幅が広くなっていると、加齢による脳萎縮であり、水頭症とは診断されません。
入院しておこなう検査
症状および画像検査で水頭症が疑われたら、つぎに脳脊髄液排除試験を行います。
まず検査前に見当識障害、歩行障害の程度を簡単なテストで評価します。次に腰に針を刺して脳脊髄液を自然滴下で排除します。採血の時に行う注射と同じ程度の痛みです。髄液を排除した後、見当識障害の程度を検査前に行った同様のテストを行い、改善が得られた場合、正常圧水頭症と確定診断されます。この検査は外来でも施行可能ですが、当院ではより正確を期すため、1週間程度検査入院して頂き、3回検査を行っております。手術の適応については極めて厳格に行っており、手術の適応とならない方には検査結果を提示し、説明させて頂いております。
治療
腰椎の椎間から髄膜内にチューブをいれそのチューブを皮下を通しておなかの中にチューブを埋め込む手術が一般的に行われます(腰椎-腹腔短絡術)。全身麻酔で行われますので、全身麻酔が可能かどうか全身状態を評価し、手術可能と判断された場合は手術を施行しています。手術は1時間程度で終了するのが一般的です。
手術後
手術後は抜糸まで1週間程度かかりますので、その間は入院していただき、抜糸終了後問題がなければ、退院となります。
正常圧水頭症のCT
脳室が大きく、シルビウス裂という脳のしわが広くなっている
正常圧水頭症のMRI(冠状断)
脳室が大きく、シルビウス裂が広がっているが、その割に脳のてっぺんのしわが狭い