発生部位と症状・治療
発生部位と症状・治療
髄膜腫は頭蓋内の発生する部位によって分類されます。症状・治療方法が異なり、部位による特徴があるためです。見つかる髄膜腫の約半分は最大径2cm以下の小さなものです。4cmを超えると手術の難易度は上がります。大きいと脳を圧迫し周囲に脳浮腫を起こすことが多くなります。小さくても脳神経のある頭蓋底にできると症状が出やすくなります。前頭葉や側脳室に発生する腫瘍は、大きくならないと症状がでないために、見つかった時に大きくなっているのが特徴です。
円蓋部 convexity
けいれん発作、手足のしびれや麻痺で気が付くことが多い髄膜腫です。頻度は最も多く、全体の4分の1は円蓋部です。手術の難易度は高くありませんが、大きくて、手足を動かす、あるいは言葉の中枢に接する部位は、手術によって症状が悪化する可能性があります。
傍矢状洞 parasagittal
円蓋部髄膜腫と同様の症状です。前頭、頭頂、後頭部の正中を通る上矢状静脈洞に接して発生する髄膜腫です。静脈の通り道の静脈洞に腫瘍が入っていることが多く、一般的には静脈洞内腫瘍は残します。その後大きくなるようであればガンマナイフをかけます。
大脳鎌 falx
円蓋部髄膜腫と同様の症状です。下肢の症状が強くでるのが特徴です。比較的多い髄膜腫です。脳の表面にはないため、表面の静脈をうまく残して摘出する必要があります。手術難易度は少し上がります。
小脳テント tent
小脳テントという、大脳と小脳の間にある硬膜から発生します。発生する部位によって症状、手術難易度が変わります。
脳室 ventricle
症状が出にくい部位のため、症状がでた場合には相当大きくなっているのが特徴です。摘出するためには、脳を切開しなくてはなりません。もっとも多いのは側脳室三角部にあるものです。
シルビウス裂 Sylvian fissure
極めて珍しい腫瘍です。小児に多いとされています。
視神経鞘 optic nerve sheath (矢印)
きわめて珍しい腫瘍です。症状がすでに強く大きなものは除いて、唯一外科手術が第一選択とならず、ガンマナイフなどの放射線治療が第一選択となる髄膜腫です。手術によって視力がなくなる可能性が高いためです。

嗅窩 olfactory groove
前頭葉にあるため、大きくなるまで症状がでない髄膜腫です。匂いがわからない、眼が見にくいなどの症状がでることもあります。また、精神症状を示して精神病と間違われることもあります。
鞍結節 tuberculum sellae
外側の視野が見にくいという症状で発見されることが多く、腫瘍は視神経管という視神経の通る孔に入る傾向があります。視神経との剥離ができず全摘出ができないこともあります。再発を繰り返すと盲になってしまいます。
蝶形骨縁 sphenoid ridge
前頭葉と側頭葉の下面を分ける蝶形骨縁に発生したものの総称です。内側に発生したものは内側型(前床突起型)と呼び、視神経や眼を動かす神経、内頚動脈など重要な構造物を含むため、手術難易度が高い腫瘍です。
錐体後面 posterior petrous
小脳橋角部とも呼びます。顔を動かす神経、顔の知覚の神経、聴力の神経のそばであるため、これらの症状がでますが、大きくなるまで気が付かないこともあります。手術でこれらの症状が悪化する可能性があります。脳神経があるため、摘出の難しい腫瘍のひとつです。
錐体斜台 petroclival
脳神経の症状や頭痛、ふらつき、歩行障害で発症します。最も手術の難しい部位と言えます。症状が軽度の場合、大きくても経過観察して、さらに大きくなる場合に治療を選択することもあります。全摘出は困難で、特に硬い場合は神経や血管を巻き込んでいるため極めて摘出困難です。昔は全摘出を目指しましたが、後遺症が大きいため、今では、症状が悪化しないよう、脳神経の通り道である海綿静脈洞部は残して摘出し、残った腫瘍が大きくなるようであればガンマナイフを行うのが一般的な治療方針です。
大槽 foramen magnum
通常のCT撮影から外れることが多いため、診断が難しい髄膜腫です。典型的ではないため、症状からも診断がつけにくく、誤診が繰り返され、発見されたときは手遅れという場合もあります。症状は四肢のしびれと麻痺です。
多発性 multiple
頭蓋内に多数の髄膜腫ができる場合を言います。両側の前庭神経シュワン細胞腫と一緒にできる場合は、遺伝的な病気です(神経線維腫症タイプ2)。22番染色体にある癌抑制遺伝子の不活化が原因とされています。症状が出たり、大きくなるようであれば、その部位の腫瘍を手術あるいはガンマナイフで治療します。